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祐天寺名物「ナイアガラ」駅長しのぶ 多くの鉄道ファン・カレー愛好家に愛され

祭壇には、内藤駅長さんが大好きだったという日本最後の国鉄蒸気機関車「C57117号」の写真で作ったヘッドマークが飾られた

祭壇には、内藤駅長さんが大好きだったという日本最後の国鉄蒸気機関車「C57117号」の写真で作ったヘッドマークが飾られた

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 今年4月に亡くなったカレー店「カレーステーション ナイアガラ」(目黒区祐天寺1)の「駅長さん」こと、店主の内藤博敏さんのお別れの会が6月9日、めぐろパーシモンホール(八雲1)で開かれ、青木英二目黒区長、G.M.ナイルさんらが献花し、故人をしのんだ。

旧国鉄の制帽姿がトレードマークだった「駅長さん」こと内藤博敏さん(写真)

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 「カレーステーション ナイアガラ」は、東急東横線・祐天寺駅からほど近く、店頭に飾られた踏切が目印。乗車券(食券)を購入してボックス席に着くと、「発車しまーす」の声とともに蒸気機関車(SL)の模型が汽笛を鳴らしながら店内を走り、客席までカレーを運んできてくれる。

 そんな古き良き昭和の鉄道の世界と、本格派のカレーが楽しめる「鉄道ムードのカレー店」を手掛けた内藤さんは1935(昭和10)年、祐天寺生まれ。戦時中、疎開先の富山県で寂しさを紛らわすため汽車を眺めるうち、SL好きになったという。

 1963(昭和38)年にオープンした同店は当初、店内をインド民芸品で装飾していたそうだが、SLが少なくなりつつあった1968(昭和43)年以降、少年時代の思い出が再燃。全国の駅や車両工場、機関区へ出掛けてはSLを撮影し、解体される鉄道部品や駅周辺の機器、駅長のサインまであらゆるものを買い集めたという。数千点にも上る貴重な鉄道コレクションの一部は、店内の照明や椅子などとしても使われており、国内外の鉄道ファンが集まる有名店となった。

 「銀河鉄道出発式」と銘打ったお別れの会では「森林鉄道」をモチーフにしたという祭壇が設けられ、内藤さんとは開店当初からの付き合いだという鉄道写真家・南正時さんが撮影した「C57117号機」の写真を使い、江戸川大学の学生たちが手作りしたというヘッドマークが飾られた。

 青木区長は「内藤さんには鉄道文化を通じて地域貢献をしていただき、東日本大震災直後には目黒区の友好都市・宮城県気仙沼市の子どもたちにカレーを振る舞ってくださった」と功績をたたえ、「これからは安心して大好きな鉄道旅行を続けてほしい」と冥福を祈った。

 同店のカレーに使われている香辛料とギー(バターオイル)を長年提供してきた東京・銀座「ナイルレストラン」のG.M.ナイルさんは「鉄道カレーの店として有名になったが、僕にとって内藤さんはカレー屋さん。お互いにカレー業界の同志として戦ってきた」と思い出話を披露した。

 内藤さんの長男で、「助役」として現在同店を営む章喜さんは「私が幼稚園に上がってから先代の鉄道熱が再燃し、全国の機関区、工場、駅に私も連れて行かれ、各地の駅や博物館で鉄道部品即売会が開かれると寝袋を持って行列に並び、小学校を休んだこともあったほど(笑)。いつの間にか店内は鉄道部品で埋め尽くされていた」と当時を振り返った。

 お別れの会を終え、章喜さんは「先代が築き上げた『食と鉄道のコラボレーション』を私も忠実に継続していきたい」と話す。「鉄道には郷愁をかき立てるロマンがあり、店内に置かれた時代を経てきたものを通じて、鉄道に関わる全ての人々へのリスペクトを感じさせるのが当店の特徴。提供するメニューはカレーなので、鉄道好きの方はもちろん、一般のカップルの方や家族連れなど『鉄道をのぞいてみよう』というお客さまにも気軽に利用いただけたら。カレー列車に、どうぞご乗車お待ちしております!」

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