日本画家・酒井ゆみ子さんの作品展「パンの旅・花の旅」が3月23日、自由が丘のギャラリー「STAGE悠(ステージゆう)」(目黒区自由が丘1)で始まる。
酒井ゆみ子さん「パンの旅・花の旅」展から、クロワッサンを描いた作品
伝統的な日本画の技法でパンと花をテーマに描く「パンの旅・花の旅」シリーズが今年25周年を迎えることから、同展では酒井さんの創作の原点をたどる小作品約10点、パンの作品約30点、花の作品約20点を展示する。
酒井さんは東京都生まれ。筑波大学大学院 人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻日本画領域修了、女子美術大学短期大学部造形科卒業。2012(平成24)年、フランスの公募美術展「サロン・ドートンヌ」に入選し、これまで10回の入選を果たしている。
酒井さんは祖父母に育てられたことで「古き良き日本文化の教育を受けた」と言い、手入れが行き届いた花の絶えない庭の風景が原点となり、幼少期から花を描き始めた。もう一つのテーマ「パン」は、酒井さんが病気で入院した時、手作りの天然酵母パンを持って見舞いに来た友人に「お礼のつもりでパンを描いた」のがきっかけという。西洋が発祥のパンを、岩絵の具や銀箔(ぎんぱく)などを使った日本の伝統的技法で表現することで「和と洋が融合する作品を制作したい」と考えるようになった。
日本画特有の顔料として、鉱石などを砕いて作る「岩絵の具」、胡粉(ごふん)を染料で染め付けた「水干(すいひ)絵の具」がある。酒井さんによれば、絵の具の合わせ方や重ね具合によってさまざまなニュアンスが表現できるという。「パンの一番の魅力は、ふっくら感とフワッと感。それらを表現するには描き方の工夫はもちろん、顔料の素材一つ一つの特徴を踏まえ、どの顔料色彩が良いか研究を重ねている。描く間際に絵の具から作る」と酒井さん。「どのように表現していくか日々発見」だそうだが、「一番はパンとの出合い。作り手の情熱やこだわりに感動した時に『描きたい』というひらめきにつながる」とも。
今回展示する「パンの旅」作品のうち、自由が丘周辺にあるベーカリーのパンを描いたものが半数に上る。酒井さんが印象に残るパンは、田園調布のパティシエが手がけた「クロワッサン」。「形が美しく、上質な発酵バターの香りで一目ぼれした」とも。作品は一部を除いて販売し(3万円~)、関連グッズとしてポストカードも販売(1枚=180円)する。
開催時間は11時~19時(最終日は17時まで)。今月27日まで。