学芸大学駅近くのデザイン会社に勤務するイラストレーター・めぐろのY子さんのブログを書籍化した「ハハ、お元気ですか めぐろのY子より」(中経出版)が3月10日に発売され、30代の女性を中心にじわじわと人気を集めている。
母への絵手紙をもとしにた「ハハ、お元気ですか めぐろのY子より」表紙
同書は、2004年に脳梗塞で倒れた実家のハハ(母)を励ますため、Y子さんが自分の日常を漫画に描いて送った絵手紙(はがき)をもとにしたもの。毎日その絵手紙をポストに投函する係で面白さに注目していた、Y子さんの上司でデザイン事務所の浅野啓太郎社長がブログ化を提案。2007年に絵手紙ブログ「めぐろのY子より」がスタートした。
多摩美術大学日本画学科卒で、「絵手紙を書くまで漫画を描いたことはなかった」というY子さんだが、お団子ヘアのY子をはじめ、幼いころから娘の裕美子さんを「Y子」と呼ぶほがらかなハハ、病気後のハハを献身的に介護する父、夫のかんちゃんなどのキャラクターがほのぼのとした画風で描かれている。
ブログ開始当初は、実物の絵手紙をスキャンしたものを公開していたが、現在はオリジナルとそれをもとにシーンを描き加えた「ブログ絵手紙」の2種類を描き分ける。「描くのは割と早いほうだが、ネタを考えるのが大変(笑)。でも今やすっかりライフワークになった」(Y子さん)とも。
Y子さんの小さなころの思い出、夫とのなれそめや夫婦生活、デザインの講師を務める女子高での様子、日本中がはまったビリーズ・ブート・キャンプ入隊記録など「母に少しでも楽しいひとときを過ごしてもらいたい」と願って描き続けた絵手紙は、多くのコメントが寄せられるようになった。
「ブログを始める前の絵手紙は『独り言』に近いものだったが、『久しぶりに実家に連絡した』『親子関係を考えるようになった』などのコメントをいただくようになり、改めて『読み手』がいることに気付いた。それからは、母の病気を通して自分が経験したことを皆さんに届けたいと『願い』を込めるようになった」とY子さん。
同書には、3年間描きためたブログ絵手紙の中からY子さん自身が選んだ77本を収録。書籍化にあたっては、より多くの人に感動を伝えたいと上司の浅野社長が社内に「めぐろのY子広報室」を立ち上げてサポートしている。
「母の病気で『家族』が一丸となったが、書籍化では『会社』が一丸となってくれてありがたかった。ブログや本を通して皆さんへ伝えたいのは、日常で起こるどんなネガティブなことでも発想転換すれば面白くなるということ。そんな『ハッピースイッチ』で毎日を一緒に楽しみましょう」。
A5版160ページ。価格は1,200円。