自由が丘の銭湯「みどり湯」(目黒区緑が丘2、TEL 03-3717-4516)の併設ギャラリー「gallery yururi」で現在、銭湯をモチーフにしたはんこを作る銭湯ハンコ作家・廣瀬十四三(としぞー)さんの作品展「としぞーハンコの世界 ふたたび」が行われている。
銭湯ハンコ作家・廣瀬十四三さんと、これまで手掛けてきた「銭湯ハンコ」の一部
3センチ四方の枠の中に、建物の外観や浴室の壁画など各銭湯の特徴がかわいいイラストで描かれた「銭湯ハンコ」。元々銭湯が好きで都内を中心に銭湯巡りを楽しんでいた廣瀬さんが2008年、消しゴム版画家として知られた故・ナンシー関さんの回顧展を見たのがきっかけで、銭湯をモチーフにしたはんこを作ることを思いついたという。
手始めに、自身が通っていた銭湯の店主の似顔絵をデザインして手彫りで作ったはんこを本人に見せたところ喜ばれ、それが評判となって2014年から廣瀬さんは銭湯専門紙「全国浴場新聞」でコラムもスタート。次に「ぜひこのテーマではんこを作りたい」とアプローチしたのが、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合が実施する「東京銭湯 お遍路」のスタンプラリー用はんこだった。
スタンプラリーで使われているはんこはその大半が地域、番号、銭湯名が入ったシンプルなもの。そこで廣瀬さんは、パンダが湯船に浸かるユーモラスな図柄をデザインした「上野 日の出湯」(台東区)のはんこを同組合にプレゼンしたところ採用が決定。これを機に会社を辞め、銭湯ハンコ作家として独立した。
同展では、これまでに手掛けた都内の銭湯92軒分のはんこの図柄を拡大して展示し、制作秘話などを紹介。そのほか、店主や銭湯絵師、銭湯で客の背中を流す三助など銭湯にまつわる人々の表情を捉えた似顔絵スタンプ「僕の好きな銭湯」、絵や文字がレリーフ状に彫られた下足錠のデザインを探った「下駄箱の鍵シリーズ」などのスタンプの図柄や実物なども展示する。
同展会場には連日、銭湯巡りが好きな人々が次々と訪れては「そうそう、こういう湯船だった」「(店主の)似顔絵がそっくり」などの感想が聞かれ、廣瀬さんが来場者と銭湯トークで盛り上がる様子も見られた。
同組合に加盟する銭湯は昨年12月現在で約560軒。同展に展示されているスタンプの中にも「廃業」となったものがいくつもある。廣瀬さんは「廃業が相次いでいるのは残念だが、やめる理由はそれぞれ。銭湯ハンコが廃業を食い止めることはできない」と話すが、「ある銭湯の店主が『銭湯ハンコを押すのが楽しい』と言ってくれたのがとてもうれしかった。(はんこをきっかけに)銭湯自体がもっと楽しい世界になってにぎわってくれたら」と期待を寄せる。
営業時間は14時~20時。1月28日まで。