美術団体「日展」は10月23日、「第10回日展」第5科(書)の入選者を発表し、自由が丘出身の書家・石川青邱(せいきゅう、本名・石川圭一)さんが2020年に続く2度目の特選に輝いた。
石川さんは1970(昭和45)年、東京・自由が丘生まれ。大東文化大学文学部中国文学科卒業後、13年間の会社員勤務を経て35歳で書家として独立。同時に、生まれ育った自由が丘に書道教室「書道研究 尚美社」(世田谷区奥沢5)を開塾し、後進の育成にも携わってきた。現在は日展会友、謙慎書道会常任理事・審査員、書道研究玄筆会理事長なども務める。
日展には28歳で初入選を果たし、これまで18度入選。第7回(2020年)で、全応募者の中から10点のみ選ばれる狭き門「特選」を初受賞し、今回が2度目。今年の書の部門は8822点の応募があり、そのうち入選率は約13%の1112点、さらに特選は入選者の約0.8%に当たり、「ここ数年で最も厳しいものだった」(日展)という。
受賞作品「彪如(ひょうじょ)」は、中国・漢代の哲学書「太玄経(たいげんきょう)」から引用した言葉で、「きらびやかで美しい様」を意味するという。授賞理由について、日展は「殷(いん)、周時代の古代文字に現代の息吹を参酌した制作技術は見事である。それは線の太細であったり、白黒のせめぎ合い、さらに広狭、潤渇、粗密が微妙に混入されており、特選にふさわしい作品である」と評価した。
前回の特選受賞時には、「書家として一つの『デビュー』を迎えることができた」と喜びを語っていた石川さん。2度目の受賞で日展会員・審査員の資格を得たと同時に、今後は出品委嘱者として毎年無鑑査で作品を出品できるという。「今回の受賞で、美術界において『芸術家』として認知してもらえる立場になれた。今後は自分の主張を鮮明に作品に投影していきたい」と意気込む。
書道教室での指導も変わりなく続けるといい、「生徒たちには『本格の書』を見せてあげたい。地元・自由が丘の文化芸術の発展にも寄与できれば」とも。
日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門にわたり約3000点の芸術作品が展示される「第10回 日本美術展覧会」は11月3日~26日、国立新美術館(港区)で開かれる。