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自由が丘の老舗洋菓子店「風月堂」が閉店-55年の歴史に幕

2月15日で閉店した「自由が丘 風月堂」店内
(写真提供:自由が丘商店街振興組合)

2月15日で閉店した「自由が丘 風月堂」店内 (写真提供:自由が丘商店街振興組合)

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 自由が丘の老舗洋菓子店「自由が丘 風月堂」(目黒区自由が丘1)が2月15日、閉店した。

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 同店は、明治時代に東京・銀座にあった「米津風月堂」が日本で初めて手がけた「シュークリーム」の味を、文献を基に再現したことで知られ、当時の新聞広告に掲載されていたという「シュ・ア・ラ・ケレーム」の商品名で販売。同店の人気メニュー「スペシャルソフトアイスクリーム」などとともに、創業から55年の長きにわたって幅広い客に支持されてきた。

 31歳で創業し、86歳を迎えた今も現役で洋菓子を手がけるオーナーの門林泰夫さん。父は明治の洋菓子作りの草分け的存在だった門林弥太郎で、自身も抽象的造形菓子の第一人者として活躍してきた。「高齢ではあるが、まだ自分自身に少し余裕のあるうちにと閉店を決断した」と話す。

 2月に入って利用客に閉店を知らせたところ、「小さいころ母に連れられて店を訪ねて以来、長年買わせていただいてきた。その思い出いっぱいの自由が丘風月堂なくなるのは寂しい」といった手紙や電話が数多く寄せられたという。「恐縮するとともに大変感激した」

 開業当時は自由が丘の街はのどかな雰囲気で、今ではメーンストリートとなった出店場所も「裏通り」に近い感覚だったという。「『自由が丘婦人』と呼ばれた良いお客さまが多く、車でお見えになりたくさんお菓子を買ってくださった。しかし店の前の通りがバスの運行路になってからは、昔からのお客さまが買い物しづらくなってしまった。そうした『街の変化』も閉店の理由」と残念さをにじませる。

 閉店と同時に近隣の住宅街にある家庭向け製菓材料店「風月堂 自由が丘」(世田谷区奥沢2、TEL 03-3724-1234)を本店に据え、今後は同店をメーンに洋菓子を展開していく。

 「実は閉店した店からガスオーブンなどを持ち込み、フランス語で『歩道の石』を意味する四角い形のフランス菓子を試作しているところ。今年中にインターネットで販売できたら」と、変わらぬ洋菓子への思いと意気込みをみせる。

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