買う

村上春樹さんの新作を同時に楽しむ「シンクロ読書会」-深沢の書店で

村上春樹さんの書き下ろし表題作「女のいない男たち」を全員で同時に読むイベント「Synchronized Reading」の様子

村上春樹さんの書き下ろし表題作「女のいない男たち」を全員で同時に読むイベント「Synchronized Reading」の様子

  • 0

  •  

 駒沢公園通り・深沢不動交差点近くのブックス&ギャラリー「SNOW SHOVELING BOOKS & GALLERY」(世田谷区深沢4、TEL 03-6432-2576)で4月18日、作家・村上春樹さんの短編集「女のいない男たち」発売記念イベント「Synchronized Reading」が開かれた。

幅広い年齢と職業の「ハルキスト」が集まった「Synchronized Reading」

[広告]

 9年ぶりの短編集となる同書を発売当日にみんなで同時に楽しみ、語り合おうという同イベント。もともと店名が、村上さんの著書「ダンス・ダンス・ダンス」の中に出てくるメタファー「文化的雪かき」に由来していることから、「ハルキスト」の店主・中村秀一さん自らが企画した。

 夜20時過ぎ、仕事を終えて駆け付けたスーツ姿の男性も含めた20~50代の男女約20人が集まった。ソファ席や椅子席に腰を下ろし、ジャズやビートルズナンバーがゆったりと流れる雰囲気の中、中村さんの合図で、書き下ろしの表題作「女のいない男たち」を全員で同時に読み始めた。

 一刻も早く新作を読みたかったに違いない参加者たちはじっと本に目を落としたまま、店内は静かな時間が過ぎていく。やがて作中に登場する楽曲「夏の日の恋」が店内に流れ、時間にして約30分間の読書時間が終了した。

 後半のフリートークは参加者同士の自己紹介から。出版関連や高校教諭、外務公務員、医療系、アパレルなど職種もさまざまで、中には「来日前に読んでいた翻訳本との違いも楽しみながら村上作品を読んでいる」と話すモンゴル人エンジニアも。「村上さんの作品はいろいろな人に読まれているが、この読書会はまさにその『縮図』のよう」と話すのは、文藝春秋・宣伝プロモーション担当の谷村友也さん。

 店内のあちらこちらで、ドリンクを飲みながら読後の感想を思い思いに話し合う姿が見られた。作品は、夜中の1時過ぎに電話がかかり、「僕が十四歳のときに恋に落ちるべき女性」が自殺したと彼女の夫が伝えるシーンから始まるが、ちょうど彼女にふられたばかりだと話す参加者の男性は「思わず自分のことと重ねてしまい、主人公の混乱ぶりやまどろっこしさに『これが男というものなのか』と思った」と苦笑い。

 「今回の作品は、いつもと比べると無駄な文章がない気がする」「この部分は女性でも共感できた」など、これまで読んできた作品などと比較しながらトークも盛り上がった。

 「事前に本を読んで参加するスタイルの読書会だと、理論武装や『知ってる自慢』が多くなりがち。今読んだばかりの作品の感想を、ある意味フェアーに話し合える場をつくりたかった」と中村さん。読書イベントに初めて参加したという女性は「今までは自宅で読むのが当たり前だったので、みんなで一緒に読むのは面白かった」とも。

 中村さんも「他作品に見られるモチーフを皆さんから教えてもらったり、ここはそう読んだのかと新鮮な驚きもあり、作品を深く読む楽しさが感じられた」といい、今後もこうした「シンクロ読書会」を企画する予定だという。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース