![アニメ映画「窓ぎわのトットちゃん」のキャラクター・トットちゃんと黒柳徹子さん
© 黒柳徹子/2023 映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会](https://images.keizai.biz/jiyugaoka_keizai/headline/1679302759_photo.jpg)
俳優・黒柳徹子さんのベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」が初めてアニメーション映画化されることになった。配給元の東宝が3月20日、今年の冬の公開に向け制作中であることを発表した。
黒柳さんが1981(昭和56)年に出版した自伝的著書「窓ぎわのトットちゃん」は、以前の小学校を退学になったトットちゃんが、目黒区自由が丘にあった「トモエ学園小学校」で経験した思い出を描いた作品。日本で累計800万部以上の発行部数を誇る戦後最大級のベストセラーで、さらに世界では20以上の言語に翻訳され2500万部を突破した。
これまで同書が映画化されなかった理由について、黒柳さんは「ものすごくたくさんの映画監督から映画にしたいと依頼があった。ただし、読んだ方は自分の中でトモエの児童のことを想像している。読んだ方が作った映像の方がきっといいだろうと思い、全てお断りしてきた」と話す。「そうしたら今回突然、アニメーションの話が来た。アニメーションならば(実写よりも)私が書いたもの・イメージしたものがうまく描かれるのではないかと思った。映画を見た若い世代の皆さんに『面白かった』と思ってもらえたら」と期待を寄せる。
黒柳さんに直接オファーしたのは、アニメーション監督の八鍬(やくわ)新之介さん。企画した2016(平成28)年当時、中東・シリアでは化学兵器によって子どもたちの命が、国内では相模原の障がい者施設で多くの命が奪われるニュースが報じられていた。「暗い出来事に触れる中で、アニメーションを通して社会にできることはないだろうか」と考えた時に出合ったのが同書だったという。「生と死、戦争と平和、思いやりと差別など相反するテーマが、みずみずしい子どもの言葉で語られている。そのまま映像化して世界中に届けられたら、今よりほんの少しだけ社会が明るい方向に進むかもしれない」と意気込む。
トモエ学園小学校とその前身・自由ケ丘小学校の跡地に建てられた記念碑を現在管理する自由が丘商店街振興組合の原武理事長は「今回の正式発表まで皆さんに黙っているのは心苦しかった。晴れて情報が届けられるところまでこぎ着けられたのはうれしい」とほほ笑む。同組合はアニメ制作会社・シンエイ動画からの依頼を受け、当時の街の様子が分かる古い写真などの資料を提供したほか、トモエ学園卒業生を仲介するなど制作に全面協力してきた。「自由が丘の地名の発祥の地が忠実に再現されたアニメーション映画として世に出る。今から楽しみ」とも。