自由が丘商店街振興組合は4月24日、自由が丘の街のために開発が進められていた新品種バラが完成し、名前を「自由が丘」に決めたと発表した。
【写真】咲き進むと赤みを帯びたピンクから上品なグレー系ピンクへと色が変わる
「自由が丘」は、バラ愛好家から支持されるバラ苗専門店「コマツガーデン」(山梨県)代表でバラの育種家・栽培家の後藤みどりさんが約5年かけて開発したバラ。
開発のきっかけは、緑多い街並みを目指す同組合の緑化活動「自由が丘森林化計画」の一環で、2009(平成21)年に始めた都市養蜂「丘ばちプロジェクト」。ミツバチが好むとされる原種バラを集めたローズガーデンを自由が丘の街なかに作ることになり、後藤みどりさんに監修を依頼。そこで街の緑化活動を知った後藤さんから「自由が丘のためのバラがあればいいですね」と提案があったという。
後藤さんがイメージしたのは、都市養蜂に取り組む自由が丘の街に合う「花の香りが良くミツバチの蜜源となりやすい」バラ。同組合環境部の中曽根孝之部長は「街の目的に合わせた新しいバラを作る。まさかそんなことができるとは思わず、最初は後藤さんの提案に半信半疑だった」と振り返る。
2014(平成26)年、自由が丘のためのバラ開発プロジェクトが始まった。まず、街の環境やニーズに合わせたバラを交配させて候補となるバラを生み出し、試験栽培を重ね、さらにその中から良質なバラを選び出す。そして最終に残った、まだ一つしかない苗木を50株、100株と増やしていく地道な作業が続いた。完成が目前となったころ、街もバラのお披露目に向けてイベントや公式サイト上で名前の募集を始め、自由が丘駅前の花壇にはバラをはわせるトレリスを設けるなど着々と準備を進めてきた。
発表を目前にした昨年、国内で新型コロナウイルス感染拡大が始まり、5月に予定していた発表セレモニーは中止に。今年に開催延期したものの、それもかなわなかった。「公での発表の場を失ったのは残念だが、咲き進むと赤みを帯びたピンクから上品なグレー系ピンクへと色が変わっていくその美しさを見ると、喜びもひとしお」という。
名前の募集には約400件の応募があり、いくつもの候補の中から「街のシンボルとなるバラだけに皆さんに分かりやすく、呼びやすい名前」として「自由が丘」が選ばれた。「シンプルな名前になったが、いつかこのバラが街の緑化だけでなく、他の街との友好を結ぶ象徴になれば、との思いもある。表記は異なるが『じゆうがおか』と呼ばれる町が全国に複数あり、バラを通じてつながりができたら面白いかも」とも。
4月下旬から自由が丘駅前の花壇では「自由が丘」が次々と咲き、道行く人たちの気持ちを和ませている。「これから『自由が丘』が毎年咲いてくれなければ意味がない。一緒に育ててくださる街のボランティアが増え、次々と苗を増やして街中に広げていけたら」と期待を寄せる。